波多野豪<後編>
「ビッグな豪になるために」
カタールでの集中開催という特殊な大会になったACLでは、ひりつくような緊張感のある試合が続いた。ここで波多野豪は集中の極意を学んだ。
「GKは技術もさることながらメンタルがいちばん大事だと思います。たとえ開始1分で失点したとしても、サッカーの試合はそのあと89分続く。そこでキーパーのメンタルが下を向いてしまうと、チームもどんどん悪くなっていって勝点を獲得出来なくなってしまう。
常に集中しつづけないとチームを勝利に持っていけない。それはJリーグでも感じていたことですが、ACLでよりはっきりと学べました。そのおかげで、高いメンタリティで試合に臨むことが出来ていると思います」
一年間を通して、大先輩の林彰洋からは細かいところを吸収したという。
「林選手はよく、選手とのコミュニケーションをとっていました。試合中やミーティングが終わったあとに、守備の確認をマメにとっていたのです。
そういう様子をつぶさに観察して試合に出たときにはぼくが出来るようにと、心がけていました。練習で学ぶことは技術。それ以外の場や試合では、林選手がやっていたような細かいところやポジショニング、そしてメンタリティについて学べたと思います」
そんな波多野を長谷川健太監督は安定感が出てきたと評価し、ファン・サポーターは頼もしく思い始めた。厳しい世の中だが、波多野豪という存在が明るい材料になっている。
「嬉しいですし、ぼくもそういう声は聞いています。たくさんいただいているSNSのメッセージも全部読み、そういう期待を感じています。そのイメージを崩さず、もっともっとプレー面でも引っ張っていけるようにがんばっていきたい」
東京での活躍が認められ招集されたU-23日本代表候補合宿にも手応えを感じている。
「自分自身もコンディションがいい状態で挑んだU-23日本代表の合宿で手応えもありますし、自分の持っているものをすべて出し、いいプレーを表現できたかなと自分では思っています。でも評価をするのは自分ではないですから、来季のリーグ開幕まで準備をして、また選んでもらえるようにがんばっていきたい」
ACL期間中、訃報のあったマラドーナさんのようなプレーをしていきたいというコメントがあった。
GKなのにそう言えるところが彼の素晴らしさであり、楽しさでもある。
世界の波多野豪になるための道筋も、より具体的に描けるようになってきている。
「やはりプロサッカー選手なので、それこそマラドーナさんのように、GKですけれどプレーで観衆をわかせられるような活躍をしていきたい。
目立つところではオリンピックもありますし、日本代表が優勝すれば、なでしこジャパンが以前、世界一になったときのように世界から注目される。もっと波多野豪の名が世界に広まっていくようにがんばります」
東京の豪がよりビッグになる日は近い。
・・・