波多野豪<前編>
「ニューヒーローあらわる」
波多野豪。
2009年、小学生だった自分はテレビにかじりつくようにしてルヴァンカップ決勝を観ていた。
あのときのように、FC東京を愛する人々に優勝の喜びを味わってもらいたい、だから絶対にタイトルを獲りたい。
これが1月4日の新国立決戦を前に波多野豪が考えていることだった。
「みんなで2021年の最初を笑顔で始められるようにがんばっていきたい」
それも守護神の座についたからこそ言えること。
2020年を「豪」の漢字一文字であらわした波多野。そのとおり昨シーズンは、彼が東京のレギュラーポジションを掴んだ年として記憶されることになった。
東京のアカデミーに所属し、育成年代では世代別日本代表の常連。それでもトップに昇格してからJ1リーグでデビューを果たすまでには時間がかかった。
「なかなか試合には絡めない状態が約3年間続いて、悔しい想いをしていました。でも外から観ているときも、ピッチ内で練習しているときも、常にしっかり準備はしていた。U-18から昇格したときよりもレベルが上がった状態で、2020年はトップの試合に出られたと思います。ちょっと長かったですが、この時間のおかげでデビューまで十分な準備が出来ました」
2019シーズンはJ3で23試合2,025分間の出場。ここでのパフォーマンスがよかったことは彼の評価を高め、2020シーズンの好プレーにつながる下地をつくった。
「2019シーズンもルヴァンカップのグループステージに出場していました。そこで結果が出せなかったのは残念ですが、J3のほうで多くの試合に出場させてもらい、たくさんの経験が出来たので、試合勘を掴めました」
2020シーズンは、アウェイの第9節セレッソ大阪戦から3試合連続の先発。
ここで一度出場が途切れ、アウェイの第20節湘南ベルマーレ戦を経て、ホームの第30節柏レイソル戦から再びレギュラーポジションを掴んだ。
「3試合目の広島戦で3失点と悔しい想いをし、そこからしばらく試合に出られなくなりました。
ただ、そこで折れずにトレーニングに励み、再び訪れたチャンスが湘南戦。いい内容の完封勝利が自信になり、先発に復帰して2試合目の川崎戦以降は地道に鍛えた成果が出て、自分でもよく抑えられたと思っています」
ACLと最終節のヴィッセル神戸戦、そしてルヴァンカップ決勝を経て、いまや波多野は本物の守護神になりつつある。
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