携帯アクセス解析
back

プレイヤーズ インタビュー

top
蓮川壮大「愛する青赤の勝利のために刻んだ成長と今」


蓮川壮大
「愛する青赤の勝利のために刻んだ成長と今」


安部柊斗、そして来季の正式加入が決まっている岡庭愁人。FC東京U-18から明治大学を経てFC東京トップチームへとやってきたアカデミー卒の選手たちが脚光を浴びている。今シーズン既にJ1デビューを果たしている蓮川壮大も、もちろんそのひとりだ。彼らに共通しているのは最後まで戦うひたむきさとハードワークを貫く姿勢。攻守に積極的なプレーヤー像は、東京が求める理想にぴたりと当てはまる。

なぜ彼らはたくましいのか。蓮川のケースを追ってみた。

◆東京スピリット

「小学校のときのレジスタFCも含め、自分が所属したチームは戦うことが基本にあり、そこに年々戦術など様々な要素が上積みされていくイメージで育ってきました。まわりに左右されず、変わることなく積み上げが出来ていったという感じはあります」

レジスタFC、FC東京U-15深川、FC東京U-18、明治大学。指導者は替わっても、FC東京トップチームに通じる価値観を備えた環境でサッカーを続けてきたのだという。

FC東京歴を遡ると、中学2年生の時点で深川の監督に就任した奥原崇(現FC東京アカデミーマネジメント部長)との出会いがプロサッカー選手をめざすうえで大きな存在となっていた。
「奥原さんがいなかったらプロになれていないと思います。メンタル面は奥原さんのおかげで強くなったようなもの。まだ十分とは言い難いですが、逆境から良い方向に持っていくための方法、自分をちゃんとコントロールするための基礎をつくってくれた監督だと思っています。人生の分かれ道を選択するときには、いつもまず奥原さんに相談してきました」

スクール時代にまで遡れば山口広野(現FC東京U-15深川コーチ)にも教わった過去がある。FC東京の練習施設に行くと、そうした人々と常に顔を合わせることが出来る。明治大学に進学したあとも心の奥底には深川や小平の風景が根付いていた。東京スピリットがずっと彼の背中を貫いていたのだ。

「小平でたまに会ったときに『あのプレーはよかった』と褒めていただいたりして、自分の活力にもなっている。それが東京のよさでもあると思います。過去から積み重ねてきたものを受け継いでずっと応援してくれる、そういう人を大切にしたい。結果で恩返し出来たらと思います」

◆アカデミーと大学

戦術以前のひとりのサッカー選手としてやらないといけないことを100%やる」という根本。それはFC東京U-15深川でも、FC東京U-18でも変わらなかった。

「キレイなサッカーというよりは強いサッカーでした。個人で相手を圧倒したり、球際に厳しくハードワークをしたり。当時監督の佐藤一樹さん(現V・ファーレン長崎トップチームヘッドコーチ)が“一枚岩”という話をされていましたが、ひとつになって戦っていくというところをベースに高校3年間を過ごしました」

チームに貢献する姿勢をはっきりさせた高校時代を経て、明治大学ではサッカーに対する取り組みがさらに厳密になっていった。

「栗田大輔さん(明治大学サッカー部監督)はいい意味で厳しい監督です。本当に隙がなく、細部にこだわる。試合中だけでなく私生活に至るまで自分にいっさいの隙を作らないことにこだわっていました。試合に勝つ、勝ち続けることが自分やチームの成長につながるという考えだったので、結果にもこだわっていました。何をすればもっと勝つ確率が高くなるのか、どうすればゴールを取れるのか。あるいは守れるのかと、勝敗に直結するプレーを選択していました。それが自ずとゴール前で身体を張るとか前線から追うという、戦うサッカーにつながっていったと思います」

よくアカデミーの年代では組織と個、育成と結果の二択でどちらを優先するかという議論になりがちだが、究極的にはどちらも重要になる。蓮川はまさに満点の回答をめざしていた。
「特に大学では個にこだわってやっていました。11人のうちひとりでも個の力が足りない選手がいると機能しないですし、強い個人からの強い組織だと思うので……毎日ほとんど1対1の練習をしていました。朝の6時からアップなしで1対1というのが普通になっていました。プロに入ってなおさら感じますが、何か武器、個人として絶対負けないものがないとプロでも活躍出来ないと思います」

◆プロ1年目

蓮川のJ1初先発は第4節の大分トリニータ戦。ここまでは順調だったが、5連敗中の最後の2連敗に関わり、苦い記憶が残った。内田宅哉の負傷によって急遽右サイドバックとして出場した横浜F・マリノス戦も、直後の鹿島アントラーズ戦も、3失点で敗れた。

「人生で5連敗なんて経験したこともなかった。でも、こういう経験を1年目から出来るというのはなかなかないとも思います。この経験は、これから先の東京、これから先のサッカー選手としての自分につなげるため、自分が年齢を重ねたときに若い選手に伝えていくためには、絶対にマイナスではないと思います。修正するところ、改善するところは多いですが、元気に前向きにやっていくしかない。1年目の自分がそのフレッシュなところによってチームに与えられる影響は少なからずあると思うので、そこはネガティブになりすぎず、やっていきたいと思います」

暗雲を振り払う機会は、鹿島戦から一カ月後に訪れた。渡辺剛が出場停止となった第19節徳島ヴォルティス戦にセンターバックとして先発したのだ。蓮川はボックス内でも身を投げ出すような鋭いスライディングでボールを刈り、大迫力のディフェンスで完封勝利に貢献した。思い切りがよすぎてイエローカードが出ないかと観ているほうはヒヤヒヤする場面もあったが、それが彼のよいところでもある。老練さを漂わせるのは当面先でいい。フレッシュさと持ち味を発揮して、蓮川は己が愛する青赤の勝利に貢献した。それが重要だった。

「天皇杯に出場して悔しい負けもありましたし、リーグ戦でスタートから出る機会が少なかった。ただそのなかでも常にいい準備をして、出たときにはチームを勝利に導けるようにと、日頃から100パーセントで練習をしていました。僕がスタートから出て勝った試合がほとんどなくて、徳島戦はスタートから出た試合で初めての勝利でした。そういう意味では今日は自分のプレーどうこうと言うよりは、無失点で試合に勝つことを目標に戦えた、それがしっかり出来たことがよかったと思います」

J1のピッチに、確かな爪痕を刻んだ。それが今後への踏み台になる。蓮川は今日も小平で先発の機会を伺い、センターバックとサイドバックの二刀流でチャンスを掴むべく牙を研いでいる。



(c)F.C.TOKYO