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プレイヤーズ インタビュー

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高萩洋次郎「柏戦で復活を遂げたナンバー8」


高萩洋次郎
「柏戦で復活を遂げたナンバー8」


FC東京の5連敗が始まったのはJ1第9節川崎フロンターレ戦からだった。
高萩洋次郎は1-3となった後半19分から出場。途中出場の内田宅哉、田川亨介とともに攻勢に出たが、互いに1点を追加して2-4の敗戦に終わった。第10節アビスパ福岡戦はベンチに入るも出場機会がなく、背番号8は続く4月21日のルヴァンカップ グループステージ第3節大分トリニータ戦に先発。FC東京U-18所属の野澤、梶浦、森田の3選手も帯同するフレッシュな顔ぶれで激闘を制した。

試合が始まる前、精神的支柱となるベテランは仲間の選手たちにこう語りかけていた。
「普段、試合に出ていない人も出ている人も、この試合に向けて高いモチベーションがあると思う。その気持ちを勝つためにぶつけよう。やるからには楽しんで、みんなでサポートし合ってがんばっていこう」

長谷川健太監督時代のガンバ大阪でヘッドコーチを務めた片野坂知宏監督が率いる大分はひたむきなファイトで向かってきたが、東京も豊富な運動量と激しい球際の守備で対抗し、1点のリードを守って勝利を収めた。リーグ戦の不振を吹き飛ばすような爽やかな勝点3だった。

前半オフサイドにはなったがレアンドロに良いパスを供給するなど貢献した高萩は、ルヴァンカップでの白星をこう振り返った。



「チームがまとまって、全員で戦って勝てたことが一番の収穫だと思います。(4-1-2-3のインサイドでプレーしてみて)もっともっとチャンスを作らないといけないし、スムーズにボールを動かして相手エリアでプレーする時間を増やしたいと思っています。まだまだ改善したいところがありますが、良いところは続けてやっていきたいし、これからもっと良くなると思います」

この時点で7連戦中、まだリーグ戦3試合とカップ戦2試合の5連戦が残っていた。公式戦の連敗を止めて一段落ついたとはいえ、安心出来る状況ではなかった。

「今日のようにチームがまとまってプレーすること、勝ちたいという気持ちをもっと前面に出してプレーすることがいま全員に必要なことだと思うので、チーム一丸となって、まずは誰が出ても戦う気持ちをもってプレーしていきたい」

しかし、この大分戦をきっかけに東京が不調から抜け出すことはできなかった。その後もサガン鳥栖に敗れ、徳島ヴォルティスと引き分け、横浜F・マリノスに敗れ、ヴィッセル神戸と引き分け――カップ戦とリーグ戦で明暗が分かれる結果が続いた。神戸戦の結果によりルヴァンカップではグループ1位通過を決めたが、J1第13節で鹿島アントラーズに屈し、リーグ戦では長谷川健太監督就任以来初の5連敗。



神戸戦のあとには「チーム全員が同じ方向を向いてまとまって戦うことによってリーグ戦にも良い影響を与えられると思っているので、チームがまとまる、誰が出ても同じ気持ちで戦えるというところはやっていきたい」と話していたが、鹿島戦では結果につながらなかった。



そして鹿島に敗れたあと、高萩がリーグ戦の先発メンバーに加わった。ポジションはトップ下だった。

「個人的には今シーズンリーグ戦ではここまで先発をしていないという意味では悔しい想いをしていて、チャンスが来たらぶつけてやろうと思っていました。この1試合で個人としてもチームとしても、勝ちを持ってきてきっかけを掴む試合にしたいです」と、意気込んだ。

対戦相手である柏レイソルは東京同様、下位に沈んでいるが、もちろん本来地力はあるチーム。高萩は「能力の高い選手が多く、しっかりと堅い守備から良い攻撃を仕掛けてくる」と、警戒した。この相手からどう点を奪い、自陣のゴールを守るのか、そして現状のチームに足りないものを意識して、アウェイの地・日立台でこの試合をどう展開させるのか――司令塔として描く絵は明確だった。

「まずは攻守両面でチームを助けられるようなプレーをしていきたいです。攻撃では攻守が切り替わったときのつなぎ役でスムーズに攻撃に行けるようなポジションを取り、ボールを受ける仕事をやっていきたいです。守備では、危ないときは前線からしっかり自陣に戻り、前から行くときはコースを限定して自分のところで奪えなくても味方が後ろで奪えるようなプレーをしていきたいと思います」
そして、こう言葉に力を込めた。
「(ファン・サポーターに)画面を通してでも闘志、戦うプレー、球際に負けないこと、走ること、そういうところが伝わる、気持ちを出したプレーをしたいと思います」

そして5月15日「Jリーグの日」に、連敗脱出は果たされた。2アシストで貢献するほか、献身的なプレーで縦横無尽にピッチを駆け、ボールを動かし、まわりにコーチングで最終ラインのポジションを修正し、東京を4-0の勝利に導いた。

「守備の選手も攻撃の選手も思い切ってプレーできるようなつなぎ役として、攻守のスイッチを入れることを意識してプレーしました」

昨シーズン終盤に中盤のポジションを失ったあと、負傷も重なり、スタートから出遅れた今シーズン。この柏戦がリーグ初先発だったが、その舞台で、しっかりと成果を挙げた。あまりに素晴らしいパフォーマンスで、長谷川健太監督も90分間が終わるまで交代を考えることは微塵もなかった。悔しさを力に変え、120パーセントのプレーで成し遂げた大勝劇だった。

背番号8をトップ下に置き、東京は息を吹き返した。このあと、半年にも及ぶ長いシーズンが残っている。諦めるのはまだ早い。高萩とその仲間たちの戦いはこれからが本番だ。



(c)F.C.TOKYO