品田愛斗<後編>
「東京でやり続けた男の苦悩と覚悟」
──この苦労した2年間は思い描いていた成長曲線とは違いましたか?
「そうでもないです。一年目などはカップ戦のメンバーに入れるとも思っていませんでした。線が細いということがいちばんのネックで、まだ戦える身体ではないなと。
だから最初の1~2年は苦労するだろうということは、自分にとっては想定内でした。出し手と受け手の関係性で連携してプレーする中盤の特性上、自分を理解してもらうには試合に出て一緒にプレーしてみないと分かり合えない難しい面もあり、いろいろどうすればいいのか悩みましたが、、考えすぎても仕方がないと。
結局はやり続けるしかないということだけしか頭になかったです」
──U-18からトップに上がり、どんな点に苦労を感じますか。
「アカデミーでもテクニックはもちろん走る・戦う、ということがベースにあり、それをやり続けた結果がトップに上がったのだと思います。
そこから先は長谷川監督に使ってもらえるために、いかにやり続け、腐らずにチャレンジできるかというところだと思います。
アカデミーの出身者はそこで苦しむことが多いと思いますが、個々に「やってやろう」という想いはある。向き合い方は選手それぞれ違うと思いますが、一人ひとりが向き合い続けている状況です」
──J3リーグへの出場が多く、そこで結果を出してもなかなかトップには絡めないという時期もありました。落ち込むことはなかったですか?
「いや、落ち込むことはなかったです。やはり以前は守備が苦手な選手でしたし、条件が揃うまでは試合に出られないことは覚悟していました。
試合に出るか出ないかには関係なく、ただ単になんでもできるようになりたいなという想いがあり、自分で言うのもなんですが、ひたむきに取り組んでいたので、その姿勢は評価してもらえていると思います」
──若い選手は武者修行に出るように移籍をするケースも多いですが、東京に残ることに焦りはなかったですか。
「全員が全員、東京に残ってやり続けようと思っているわけではく、いろいろな選手がいて、いろいろな成功の仕方があるのだと思います」
──練習で違いを見せられるようになるまで地道にやっていくという話も昨年などはしていましたね。
「移籍していく選手には、彼らは彼らで頑張ってほしいと思っていました。自分はそうではなく出ていかないでやり続けます。それは考え方の違いですから」
──実際に練習で何に気をつけると力を発揮できるようになっていくのでしょうか?
「求められるのはベースの部分だと思います。まずは、そこの部分をJ1のレベルでやれるようになったうえで自分の良さを発揮すること。そこが重要かなと思います」
──そのベースとは、J1のプレッシャーやスピードのなかで判断を下して、ボールを回して運ぶということでしょうか?
「そうですね。それができて戦うことができれば自然と自分のよさも出せると思います。J1は強度も高いですし、テクニックがある選手も多い。
ただ、自分もJ1でどれだけやれているかと言われたら、確かに昨年や一昨年より戦えるようになっているのはわかりますが、チーム力ではなく個人でどのくらい戦えているのか。
それはまだまだかもしれないですし、わからないところもあります。とにかく、相手に負けないようにやるしかないかなと思います。」
──強度に順応すれば、すごいパスをトップでも出せるようになっていきますね。
「慣れなのかわからないのですが、そうなるまでには試合に出るチャンスを得ないといけないですし、やはりベースの部分は絶対に重要だと思います」
──J1デビューは、実は2018年の札幌戦でした。そこから二年間の成長をあらためて振り返ってもらえますか。
「ぼくはパスをつないで崩すのが好きな選手ですが、長谷川監督が掲げる縦に速いサッカーでは、運動量やインテンシティが求められる。実はU-15深川時代に調布駅伝で区間賞をとっています。小学生、中学生のときは走り込みをいっぱいしましたし、タフな面も自信がありましたので、監督の要求には対応できると思っていました。
一方ではタフさを追求するあまり、自分のよさがなくなっているなとも思っていました。走るとか、球際で戦うとかをやり続けるなかで、自分のよさを出していけるようになるまで、時間はかかったかなと思っています。
昨年もJ3のチーム内での走行距離は概ね一番とか二番なのですが、自分のよさを出しきれているかと言ったら、そうでない試合が多かった。最終節のガンバ大阪U-23戦で2アシストして、やっとできそうな兆しが見えてきて。
2020シーズンのキャンプが始まり、何試合かゲームをするうちに、ちょっとずつよくなっている感覚もありました。監督からもそういう評価をいただいていたので、あとは自信を持って出たときにやるしかないなという気になりました。そこに至るまでの準備を怠らなかったのが、試合に出られるようになった一番の理由です」
──長谷川監督は昨年引退した小笠原満男選手(元鹿島アントラーズ)のようになるのではないかと言っていましたが?
「素直に嬉しいです。一年目から才能を認めているという話は直接してもらっていて、なんとか長谷川監督の期待に応えたいと思っていました。ようやく三年目にして試合に出場して勝てたので、ちょっと安心しています」
──では最後にご自身の基本姿勢と、こういうステージに辿りつきたいという目標をお願いします。
「自分が目立つ目立たないにかかわらずが、まずはチームを勝たせたい、どんなかたちであれ勝点を獲ることに貢献したい、それがぼくの選手としての価値のひとつだと思っています。そこはブレさせずにやりたいです。やはりそういう選手は攻守において主導権を握っていると思うので、そこを完璧にめざしていきたいなと思っています。
正直、海外でやりたいとかそういう明確なものはないのですけれど、いろいろやりながら壁にぶつかりながら、苦しみながら楽しむというのが自分のいいところでもあると思うので。それを繰り返して成長していきたいと思います」
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